
おっぱいが硬く張ったり、しこりや痛みがありませんか?
もしかすると、それは乳腺炎のサインかもしれません。乳腺炎は、母乳の通り道が詰まったり、細菌感染が起こることで乳房が炎症を起こす状態です。放置すると悪化し、強い痛みや高熱を伴うこともあります。
この記事では助産師が、乳腺炎の症状や原因、セルフケア、病院受診の目安まで詳しく解説。授乳を頑張るママが安心して母乳育児を続けられるためのポイントをお伝えします。
1.乳腺炎とは?種類と症状、原因をわかりやすく解説

ここでは、乳腺炎の種類とその症状、原因を紹介します。
(1)乳腺炎とは?
乳腺炎とは、母乳をつくる組織である「乳腺」が炎症を起こした状態で、乳房のしこりや張り、痛み、赤み、発熱などの症状が特徴です。

乳腺炎は原因別に以下の2タイプに分かれます。
■詰まるタイプの乳腺炎 ■ばい菌などに感染するタイプの乳腺炎 |
どちらのタイプの乳腺炎も、以下のようなことが原因になります。
・疲れ ・ストレス ・睡眠不足 ・風邪などの体調不良 |
これらがあると、母乳の流れが悪くなりやすく、おっぱいトラブルにつながることがあります。
ここでは、乳腺炎のタイプ別に症状や原因を紹介します。
①詰まるタイプの乳腺炎の症状と原因
母乳の流れが悪くなっておっぱいに母乳がたまってしまい、乳腺が炎症を起こした状態です。
母乳はおっぱいからスムーズに外に出るはずですが、何らかの原因で詰まると胸にしこりや張りができ、痛みが出ます。
主な症状
・おっぱいの一部に硬いしこりや強い張り、痛みがある ・おっぱいが赤くなったり腫れている感じになる ・触ると痛い、授乳時にも痛い(進んでくると何もしていないときも痛い) ・母乳が出にくくなり、授乳中に赤ちゃんが不満そうにする ・母乳がおいしくなくなるので赤ちゃんが飲むのを嫌がることもある ・発熱することもある |
原因やきっかけとなりやすいこと
・授乳間隔があきすぎる ・赤ちゃんがうまく吸えていない(乳首を浅くくわえているなど) ・ブラジャーや抱っこ紐などで胸が圧迫されている |
普段は授乳間隔があいても大丈夫だったとしても、疲れやストレス、睡眠不足などがあると乳腺炎になってしまうことがあります。
②ばい菌などに感染するタイプの乳腺炎の症状と原因
乳首のおっぱいが出てくる部分からばい菌が侵入し、乳腺炎を引き起こします。
詰まるタイプの乳腺炎が悪化し、細菌が感染して発症することが多いです。
主な症状
・乳房が赤く腫れ、激しい痛みがある ・熱をもったように乳房が熱くなる ・38℃以上の高熱・悪寒・体のだるさ ・母乳が黄色っぽく濁ることがある |
※熱を計るときには、脇の下で計るとおっぱいの熱で高くなってしまうことがあるので、肘の内側に体温計を挟んで計ると良いでしょう。
基本的に「詰まるタイプの乳腺炎」と同様の症状がありますが、痛みなどの症状がより強いことが多いです。
高熱が出ることが大きな特徴で、インフルエンザのように体の節々の痛みも強く出ます。
さらに症状が進むと、おっぱいの中に膿が溜まって外科的な処置が必要になることもあり、膿を予防するためにも早めに受診する必要があります。
原因やきっかけになりやすいこと
詰まるタイプの乳腺炎から始まることが多く、授乳間隔が長かったり、赤ちゃんが上手に飲めていないなどきっかけも同様です。
乳首に傷があるとそこからばい菌が入りやすいので、乳首がヒリヒリするときには特に注意が必要です。
2.【図解付き】乳腺炎のセルフケア、自宅でできる対処法

もしかして乳腺炎?と思ったら、すぐに以下の3つを行いましょう。
■赤ちゃんに上手に・頻回に飲んでもらう ■休息する ■症状が強い、セルフケアしても良くならない、悪化するならすぐに受診 |
ここでは、それぞれの対処方法をくわしく紹介します。
(1)乳腺炎を悪化させないための授乳のコツ~上手に頻回に飲んでもらう~
乳腺炎のセルフケアで最も大切なのは、母乳をしっかり飲み切ってもらうことです。
そのためには、赤ちゃんに上手に・頻回に飲んでもらう必要があります。
また、十分に飲み取ってもらうため、授乳時間や回数は制限しません。
赤ちゃんが乳首をくわえると痛くてつらい場合には搾乳も検討しましょう。
以下で紹介する「抱き方」「乳首の含ませ方」のポイントを改めて見直し、確実に飲んでもらいましょう。
①赤ちゃんが上手に飲むための抱き方のポイント
赤ちゃんに上手に飲んでもらうには、ママのおっぱいと赤ちゃんの高さがピッタリ合うことが大切です。
十分な高さのある授乳クッション等を活用しましょう。クッションなどの高さが足りないときには、バスタオルなどを使って高さを増します。

よくあるNG例は以下の通りです。
授乳姿勢を見直しましょう。

②乳腺炎を悪化させないための乳首の含ませ方のポイント
赤ちゃんの抱き方が正しくセッティングできたら、乳首を含んだときの赤ちゃんの口元を確認しましょう。
ポイント: ・赤ちゃんのお口が大きく開いていること ・赤ちゃんのアゴがおっぱいにおしつけられていること |
OKな例

よくあるNG例

また、おっぱいの痛みがある部分(しこりや詰まりがある部分)に赤ちゃんの「下あご」がくると、飲み取りやすくなります。
おっぱいの内側が痛む場合には横抱きで良いのですが、外側が痛むときは以下のような「フットボール抱き」を試してみましょう。

授乳前にホットタオルでおっぱいを温めたり、赤ちゃんが飲んでいる最中にしこり部分を優しく乳首方向へなでたりすると、母乳の流れが良くなり、さらに効果的です。
(2)乳腺炎の改善には休息が重要!
疲れやストレス、睡眠不足は乳腺炎が悪化する原因になります。
そのため、乳腺炎かも?と感じたら熱がなくても十分な休息をとることが重要です。
授乳は普段よりも頻回に必要になることが多いので、その分も含め、しっかりと体を休めることを意識しましょう。
例えば、以下の点に注意してください。
・十分な睡眠時間を確保 ・布団を敷いたままにし、できるだけ横になるようにする ・油分や糖分の多い食べ物は避け、消化の良いものを食べる ・十分な水分摂取(できれば温かい飲み物) ・できればブラジャーははずす。ワイヤー入りなど締め付けが強い下着はNG ・ゆったりした服装 ・無理のない範囲で湯船につかり、体を温める ・おっぱいが痛い場合、気持ちよければ冷タオルや冷蔵した保冷剤などで冷やす(冷凍はNG) |
赤ちゃんがいると横になることはなかなか難しかもしれませんが、授乳以外のお世話を任せられる人がいればお願いしましょう。
また、熱や痛みには鎮痛剤も有効です。
授乳中でも使用可能な鎮痛剤は、以下のサイトで確認できます。
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター :授乳中に安全に使用できると考えられる薬
ただし、鎮痛剤が必要なほど症状が強いならば受診することが最優先です。
(3)改善しない場合、熱が下がらない場合は受診を!|症状と受診目安
うっ滞性乳腺炎の場合は、赤ちゃんが上手に頻回に母乳を飲むことで、少しずつ改善していくことが多いです。
一方で、以下のような場合は早めに受診しましょう。
・赤ちゃんが飲むのを嫌がったり、うまく飲めない場合 ・飲んでもしこりの大きさが変化しない ・痛みや腫れの症状が強い、セルフケアしても改善を感じない、悪化していると感じる ・38度以上の高熱 |
乳腺炎の対応が遅れると、乳房内に膿がたまり、外科的な処置が必要になることもあります。
まとめ
乳腺炎は、早期の対処で重症化を防ぐことができます。
授乳や搾乳でしっかり母乳を出し切ること、休養を取ることが基本です。高熱や強い痛み、改善しない場合は早めに受診を。正しい知識を持ち、安心して授乳を続けるために本記事のポイントをぜひ役立ててください。

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